炎上しそうなタイトルで失礼します。不勉強で書かれたWEB記事が多く、自然由来の素材について誤解が生じていると感じるため、思い切って書くことにしました。
さて、皆さんはAllbirdsというサステナブルブランドをご存知でしょうか。今回は、このブランドを例にとってお話ししたいと思います。
この記事は、Allbirdsを非難するものではありません。悪いのはAllbirdsではなく、適当な記事を書いているWEBエディターやブロガーだということを最初にお伝えしておきます。Allbirdsへの誹謗中傷はお控えください。
Allbirds(オールバーズ)とは
Allbirds(オールバーズ)は、元プロサッカー選手のティム・ブラウン(Tim Brown)氏と、再生可能エネルギー分野の専門家であるジョーイ・ツウィリンジャー(Joey Zwillinger)氏が、2016年に創業したサステナブルなフットウェアブランドです。(現在はアパレルも展開しています。)
俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が愛用していることで一躍有名になりました。世界的にサステナビリティへの関心が高まる中、2020年1月に日本1号店がOPENし、日本でも話題になりました。まだまだサステナビリティ意識が低い靴業界において、Allbirdsは革新的なブランドだと思います。
靴はとても多くのパーツから成り立っており、全てのパーツをサステナブルな素材に置き換えることは至難の業ですから、早くからそれを実現させているAllbirdsのシューズは驚異的とも言えます。メリノウールのアッパー、再生PETのアクセサリー(紐やハトメなど)、サトウキビ由来の本底など、細部までサステナビリティを意識した製品になっています。
また、全商品のカーボンフットプリントをゼロにすることを目標に掲げ、各商品のカーボンフットプリントを測定・明記する取り組みも進めており、環境への配慮は業界随一です。
Allbirds(オールバーズ)公式サイト
https://allbirds.jp/
「自然由来の素材=土に還る」は誤解
Allbirdsの素晴らしい取り組みについて、十分にご理解いただけたことと思いますが、ここからが本題です。
Allbirdsをご存知の方には、パーツの殆どが自然由来の素材であることも周知されていることと思います。「土に還るスニーカー」と謳った記事も多く、そのように認識されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、Allbirds公式サイトには生分解性(土や水の中で分解される性質)についての記述はありません。(2021年8月現在)職業柄、靴の素材について日々勉強しており、100%生分解性を有する靴素材は少ないことを痛感している私は、ある日こんな疑問を持ちました。
「本当に土に還るのだろうか?」
各パーツについて、海外の資材メーカーも含めて徹底的に調査しましたが、どうしても完全に土に還ると思えませんでした。そこで、Allbirdsのカスタマーに問い合わせてみたところ、下記内容のお返事をいただきました。(著作権の問題が生じるため、メールの全文公開は控えます。)
Allbirdsのシューズが全て土に還るということではない。その理由は以下の通り。
- 底材に使用しているスウィートフォーム™は生分解性ではない。
- シューレースやシューズのアイレットは再生PET素材である。
ということです。はっきりとお返事をいただき、とてもスッキリしました。
「自然由来の素材だから土に還るだろう」と誰もがイメージするかもしれませんが、実際はそうではありません。もちろん、他のブランドでは、全て土に還るスニーカーが存在するかもしれません。しかし、Allbirdsに関しては、全て土に還るスニーカーではないのが現状です。
信頼性に欠けるWEBメディア
改めて言いますが、Allbirdsは嘘をついていませんし、全く悪くありません。悪いのは、いい加減な記事を書いているWEBエディターやブロガーです。とはいえ、彼らも悪意があってのことではなく、勉強不足から生じた誤解であることは明らかです。
出版社が刊行する書籍であれば、専門家により精査された正しい情報が記載されています。しかし、WEBメディアは一般人が自由に発信できるメディアです。フェイクニュースが問題になるように、記事の信頼性は低く、情報の精査は読者に委ねられています。悪意のある嘘であれば、見抜くことも簡単かもしれませんが、今回のように誤解から生じる事例は、誤った情報のまま伝わってしまう可能性が高いでしょう。
私自身も含め、WEBで情報を発信する人は、正確な情報を発信するように努めなければならないと思います。