エスペランサ靴学院が大阪に！

靴作りの専門学校「エスペランサ靴学院」が、浅草から大阪へ移転することに決定したそうです。

昨年、アパレル大手のワールドの傘下となった神戸レザークロスが、次々と不採算事業の整理が行っていることは知人（元、中の人）から聞いており、「もしかしたらエスペランサ靴学院も閉校するのでは…？」と仲間内では度々話題に上がっていました。予想通りワールドは靴学院の運営から実質的に手を引いた形になりましたが、大山一哲氏が名前を引き継ぎ、大阪で再スタートとのことです。

エスペランサ靴学院とは

1973年創立。日本初の靴を総合的に学べる学校として浅草に作られた教育機関で、1,000名以上の卒業生を輩出し、日本の靴業界を支えてきました。日本の靴専門学校としては、一番に名前が上がる大きな存在だと思います。神戸で靴作りに携わる方の中にも、エスペランサ靴学院出身の方は多くいらっしゃいます。

浅草校は46期生の卒業をもって2020年3月19日に閉校。浅草校は、靴ブランド「ESPERANZA」で知られるワールドの子会社、神戸レザークロスが運営母体でした。

47期から、ワールドと商標権使用の契約を結んだロカシューの大山一哲社長が学長となり、大阪市のA’ワーク創造館（大阪地域職業訓練センター）に移転して運営することに決定しています。

エスペランサ靴学院 公式サイト
http://shoeschool.jp/

大山一哲さんとは

大山一哲氏はご実家が靴工場という環境で育った方で、ご自身も靴作りに長年携わっていらっしゃいます。ご自身の名前を冠したブランド「ITTETSU OYAMA（イッテツオオヤマ）」を展開されていたこともあり、靴作りのことはもちろん、ブランドプロデュース～販路に関すること、川上から川下まで広い知識とコネクションをお持ちです。

精力的に活動されていらっしゃって、私自身も大阪のシューネクストと交流があった10年ほど前に何度かお会いしたことがありますが、とても気さくな方だったと記憶しています。私が卒業した靴学校の同期や後輩達からも慕われており、靴を学ぶ大阪の学生さんの間では「一哲さん」の存在を知る方も多かったと思います。

そんな「一哲さん」が学長となるエスペランサ靴学院は、きっと楽しく有意義な学校になることと思います。

靴作りを学ぶ環境の昔と今、これから

私が靴の専門学校に通っていた10年ちょっと前は、東京のデザイナーズシューズが人気の時代でした。OTO、MANA、NOST、TO & CO.、Chausserなど、多くのブランドがセレクトショップに並び、靴好きの女性達を魅了していました。個人の靴作家やデザイナーが、次々と新ブランドを立ち上げ、それに憧れて若者が製靴業界を志した時代です。

当時は大阪でも、バンタンキャリアスクール（バンタンデザイン研究所が運営していた社会人向けの専門学校）がシューズコースを開設、西成製靴塾も入塾希望者が多すぎて新卒しか入塾できない年があったほどでした。

現在、バンタンはシューズコースを廃止していますし、西成製靴塾は既卒者の入塾も募っています。日本ケミカルシューズ工業組合が主催する靴プランナー育成講座も、入校希望者は年々減少していると関係者から聞いています。ワークショップや、習い事感覚で通える個人工房の製靴講座は需要があるようですが、製靴業界全体が衰退傾向にあり、決して労働条件が良いとは言えない環境のため、本気で製靴業界を目指す人が減っているのでしょう。

このような時代背景の中、大阪で再スタートするエスペランサ靴学院の未来は、かなり厳しいものだろうと思います。恐らく、ワールドとしては不採算だと判断して手放した事業でしょうし、既に関西には上田安子服飾専門学校、神戸医療福祉専門学校、シューカレッジおおさか、西成製靴塾など、同業が複数存在します。大山学長の采配でリニューアルするエスペランサ靴学院の新カリキュラムに注目ですね。

また、エスペランサ靴学院の移転先であるA’ワーク創造館（大阪地域職業訓練センター）は、シューカレッジおおさか運営事務局の所在地でもあり、その関係性とエスペランサ靴学院の今後が気になるところです。