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PB失敗からの「ZOZOMAT」の展望は?

6/24(月)、ZOZOがスマートフォンを使って足の3Dサイズ計測ができる「ZOZOMAT」の無料配布の予約受付を開始しました。職業柄、靴関連のニュースには敏感なので、もちろん速攻で「ポチ」りました!(笑)ZOZOSUITは送料のみ自己負担でしたが、今回は送料も含めて完全無料とのことで、かなり良心的ですね。

ZOZOMATについて詳しくは、↓こちらの動画をどうぞ。

ZOZOMAT 2019年 秋冬登場

ZOZOMATがあれば、 ご家庭であなたの足を簡単に計測することが可能です。 足の形を高精度で3Dデータ化し、 足の大きさだけでなく、甲高や足幅、かかと幅など、 靴選びに必要な複数の部位を計測。 ZOZOMATから始まる新たな靴選びを、 あなたもぜひ体験してください。 ただいまZOZOTOWNの特設サイト上で予約受付中 ZOZOMATは無料です。送料も無料にてお送りいたします。 https://zozo.jp/zozomat/ Easily measure your feet from the comfort of your home with ZOZOMAT. A 3D model and accurate foot measurements are captured with a few simple smartphone scans, enabling a new way to shop for footwear online.

足サイズ測定アプリといえば、先月Nike Fitが発表されて期待が高まっているところですが、実は2017年9月にローンチされたKiBERAのビーナスフィットも同様のアプリです。ただし、ビーナスフィットは精度に難ありのようで、アプリ配布サイトのレビューで酷評が目に付きます。ビーナスフィットの測定方法から推測するところ、A4用紙のサイズを基準に足サイズを割り出していると思われますが、何せただの白い紙なので誤差が生じるのでしょう。ZOZOの足型測定アプリでは、計測の基準となる目印を印刷したZOZOMATを導入することで、誤差をわずかに留めることが可能になったということかと思います。

ZOZOMATで足型計測が簡単にできることはわかりましたが、そうなると疑問が湧いてきます。ZOZOは靴の内部計測をどうするのでしょうか…。当ブログの2019年1月31日の記事「Flicfit本格始動で、靴のサイズ選びに困らなくなる!?」にも書いたことですが、靴の内部計測ができなければ、販売現場で実用的とは言えないのです。

もやもやしていたところ、こちらのインタビュー記事を発見しました。

ゾゾマット開発担当役員が語る「PB失敗から学んだこと」 | WWD JAPAN.com

「PB事業失敗の最大の原因は”服とブランドを作る”、この2つを甘く見ていたこと」–ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOは24日、足のサイズを3D計測できる”ゾゾマット(ZOZOMAT)”を発表した。紙と専用アプリさえあれば、足の形状を3Dで簡単に手軽に計測できる技術で、今秋にもリリース予定だ。このゾゾマットに加え、身体計測のための”ゾゾスーツ”、プライ…

ゾゾマットで計測する着用者のデータが凸面だとすれば、お客さまにぴったりのシューズをリコメンドするためには、凹面であるシューズの内寸を立体的に測った上でマッチングする必要がある。こちらは完全社外秘でやっているので方法は明かせないですが、シューズを当社に納入いただいて発送するまでの工程で計測する技術になります。この内寸の計測技術もゾゾマットをリリースする秋と同タイミングで完成できるよう進めています

なるほど、商品の内部計測についても、しっかり準備されているようです。足型と靴のマッチングについては十分に期待できる内容だと思いました。

ところで、このインタビュー記事によると「ZOZOMATは靴のPBを目的とするものではない」とのことですが、靴のカスタマイズの可能性については完全に否定はしていません。

われわれが自らこの技術を使ってPBを作ることは絶対にないし、そのつもりもありません。先程も述べたとおり、われわれはITのプロであって、モノづくりのプロではない。それは服で痛いほど経験しました。

と述べながらも、

早ければ数年内には実現するかもしれません。

と可能性を示唆していますが、私個人としては、かなり厳しい道のりだと思います。

シューズに関してマスカスタマイズを実現するための技術的なハードルは現時点でかなり低いと思います。

上記の通り、ZOZOMAT開発担当役員の私見ではハードルが低いとされているマスカスタイマイズですが、製靴業に携わる私としては、この見解は疑問でしかありません。何故なら、靴は思いの外パーツの数が多く、規格外の製品を作る場合は、アッパー(甲皮)のグレーディング(拡大縮小)以外に、新たに製造しなければならないパーツ資材が多数あり、資材調達のコストや納期の面で非現実的だからです。

例えば、22.5cm~24.5cmのサイズレンジの既成靴に対し、同じデザインの26.5cmの靴を特注で生産する場合、以下の資材を用意するために新たに抜型(裁断型)や金型が必要になります。

  • 木型
  • 中底(抜型)
  • 本底(抜型または、スニーカーのような成形底なら金型が必要)
  • ヒール(特大サイズの規格がないヒールなら金型が必要)

また、ベルトや飾りがついたデザインであれば、靴サイズの違いによりデザインバランスが悪くなるので、バックルや飾りの大きさも変更する必要があるかもしれません。場合によってはカウンターや先芯などの芯材も別サイズを用意しなければなりません。

adidasの3Dプリント製スニーカーのようなものであれば話は別ですが、現在市場に流通している殆どの履物は、サイズ特注に上記のような課題がつきまといます。金型は高いものでは数万円~数十万円するものもあります。量産品では型代を量産足数で均等割してコストとして単価に上乗せしますが、1足作るだけのために高価な型代を支払うユーザーは稀有ですし、工場が負担するものでもありません。

型紙を修正してカッティングを調整すれば良いだけの洋服ですら上手くいかなかったのに、靴のマスカスタマイズのハードルが低いと言えるのは何故なのでしょうか。パターンオーダー(既成の型サイズに対し、好みの素材カラーを選択するだけの特注)であれば、企業努力で対応可能かもしれませんが、MSP(マルチサイズプラットフォーム)事業を看板に掲げるZOZOが求めるマスカスタマイズは、単なるパターンオーダーではないと思います。

ZOZOMATは、足型と既成靴のマッチングサービスについては期待できますが、靴のマスカスタマイズの展望は、決して明るくはないのではないでしょうか。

ABOUT ME
ナカハマ ナミ
1978年生まれ。工業高専の建築学科を卒業後、大手サッシメーカーに就職。20代は事務職を転々としながら、音楽制作やインターネットラジオの制作運営に明け暮れる。30歳のときにバンタンキャリアスクールで靴作りを学び、靴業界へ転職。現在は神戸市長田区の靴企画会社にて、事務職と企画職を兼務中。
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